How to make time
at home
豊かな心の時間活用法
1)ママの時間はとっても不思議
一人の

「早く食べなさい!」
そんな風に怒鳴るつもりはなかった。
「怒鳴ったら可哀想だろ!」
「私だって怒鳴りたくないわよ!」
いつも、子どもたちに優しい顔ばかりしているあの人に苛立った。
「子ども達に支度させて、車に乗せてあなたを駅まで送って、この子を保育園に送って。そのあとパートなの!時間がないのよ!」
「月に4万程度のパートだろ。大変なら辞めればいいじゃないか」
「私は、家事もこなしてパートで家計を助けてるの!
わかってる?」
「・・・無理して、こんな郊外に家を買ったからじゃないか?俺も、毎日満員電車で1時間かかるんだよ。」
「…それも、これも、あなたの給料が安いからじゃない!」
そんなこと言うつもりじゃなかったのに・・・。
あなたは、寂しそうな目でこう言った。
「・・・顔つき、変わったな」
私は、言葉を飲んだ。
「今日は送らなくていい。遅刻してもバスで行く」
あなたは背を向け、部屋から出て行った。
「え・・・」。


「まただ…。この洗濯機。やっぱり新しいのが必要だわ…」
止まった洗濯機を叩いて見るが、動かない
毎回だから、わかっているけど、今日は特別にがっかりするわ。
だから、文句も言いたくなる。
「また、手洗いね。…こういう時間のロスが大きいんだから。
あの人は私の苦労なんてわかってないのよ!」
洗濯物を取り出し洗面台で洗う。それがとても億劫に感じる。
ふと、手を止めて鏡を見た。
「顔つき、変わったかしら?眉間のシワ、こんなに深かったかな?」
目尻も・・・。なんとなく、顔全体がたるんで見える。
「鏡、昨日も今朝も、見てなかった気がする…」
リグングから聞こえた子どもの泣き声にハッとしたわ。
それがなければ、何時間も鏡の世界を彷徨ったかもしれない…。
「はいは〜い。今、行くからね〜」

お風呂上がりに、裸で走り回る下の子をバスタルで捕まえる。
「やだやだ!パパが帰るのを待つんだ!」
「パパを待たなくていいの。子どもは9時に寝ましょう!」
ぐずる下の子が風邪をひかないよう、急いで体を拭く
「早く寝ましょう。明日の朝も保育園」
「ママはパート?」
「そ、ママは、明日の朝もパート。パート行って、買い物して、保育園にお迎えに行って、洗濯して、掃除して、ご飯つくって、あなたたちをお風呂に入れるの。あなたたちが良い子で眠ってくれたら、ママは幸せなのよ」
早口で話して、パジャマを着せる。
「幸せってなに?」
「え?」
言葉に詰まった私を子どもたちがのぞく。
「あなたたちが元気でいることよ」
そう言いながら、
ブスッとする上の子の髪を急いで乾かし、
遊んでいる下の子を抱き上げ、
二人をベッドに入れて、子ども部屋の電気を消した。

新婚の時から使っている鏡台に座る。
いつもは、鏡も見ないで顔にジェルを塗っているけど、今日は鏡を見てみようって思った。
やっぱり、たるんでいる。眉間のしわ、とても気になる…。
安物のオールインワンジェルを顔に塗りながら、効果あるのかな?と疑いを持ってボトルを眺める。成分を見てもわからない。
「ま、今の家計なら、このジェルで丁度なのよ」
気になる眉間のシワを指で伸ばして、ジェルを塗りこむ。
鏡台の鏡に映る、結婚式の写真
「理想と現実」
ふとそんな言葉が頭に浮かんで、
ドサッとベッドに横たわると眠ってしまった。
ふと、目を覚ます。
壁の時計の針が11時を回っている。
「寝ちゃったんだ…」
クローゼットからあなたが出て着た。
「あ、ごめん。すぐご飯するね」
「いいよ。食べて着た。今日は会食だったんだ」
「え〜?聞いてなかったわよ。言ってくれれば、ご飯あなたの分、
作らないのに…」
「今朝、言えなかっただろ」
「それはあなたが怒り出すからでしょ!」
「俺じゃないだろ!お前だろ!」
「違うわ!あなたが怒り出したのよ!」
言い争いをしていると
子どもたちが起きてきた。
「パパ〜」
そう口々に叫んで、あなたに飛びつく娘たち。
「ごめんな〜。ママが大きな声出すから目が覚めたね〜」
と娘たちを抱きしめるあなた。
途轍もない疎外感と孤独感が
私を襲う
「もういい!」
そう言って私は風呂場に駆け込んだ。
洗面所の鏡に映る、私の顔
すごくやつれて、老けて見える。
「私、こんな顔していたっけ・・・」
涙がとめどなく流れた。


